1月 21, 2012

矢板明夫の中国ネットウオッチ - プレミアム特集 - MSN産経ニュース

【矢板明夫の中国ネットウオッチ】


「若い女性死刑囚を助けよう」 著名な弁護士がネットで嘆願書

1.21 18:00 [矢板明夫の中国ネットウオッチ]

「それほど罪深くない若い命に、私たちはなぜもう一度チャンスを与えないのか、彼女を殺すことは法律の唯一の選択なのか」  18日夜から中国のネットで出回り、大きく話題を集めた公開書簡の一部だ。著名な弁護士、李長青氏が執筆したもので、送り先は中国最高裁判所の裁判長だ。同日に浙江省高等裁判所で行われた控訴審裁判で、地裁と同様、死刑を言い渡された同省の元企業家、呉英被告(30)への判決を見直すよう嘆願する内容だ。[記事詳細]


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呉英被告の裁判を取り上げた雑誌。表紙は彼女の写真

呉英被告の裁判を取り上げた雑誌。表紙は彼女の写真

「それほど罪深くない若い命に、私たちはなぜもう一度チャンスを与えないのか、彼女を殺すことは法律の唯一の選択なのか」

18日夜から中国のネットで出回り、大きく話題を集めた公開書簡の一部だ。著名な弁護士、李長青氏が執筆したもので、送り先は中国最高裁判所の裁判長だ。同日に浙江省高等裁判所で行われた控訴審裁判で、地裁と同様、死刑を言い渡された同省の元企業家、呉英被告(30)への判決を見直すよう嘆願する内容だ。

中国の裁判は二審制が原則で、死刑のみは最高裁判所の審査と許可が必要だ。呉英死刑囚の判決はすでに確定したが、最高裁判所の判断で判決が変わる可能性はわずかながら残っている。

李長青氏は呉英死刑囚を担当した弁護士ではなく、彼女と面識もない。公開書簡は出した理由は「命の尊重」と、「中国がより健全な法治国家になるために一人の法律関係者としての良心を守るため」としている。李氏の公開書簡は各サイトに転載され、多くのコメントが寄せられた。そのほとんどは手紙の趣旨を支持する意見だ。

1981年生まれの呉英死刑囚は、同省東陽市郊外の農村部の出身。専門学校を卒業後、美容師などを経て、服装、住宅を販売する会社を創業した。2005年頃から会社の資金繰りのため高い配当を宣伝文句に、民間から資金を集めはじめた。その規模は瞬く間に大きくなった。その後、経営実態のない架空会社を次々と設立し、事業が拡大したように見せかけたが、ほとんど自転車操業の状態が続いた。グループ会社の総資産は一時38億元(約460億円)になり、浙江省を代表する女性企業家としてメディアにもしばしば登場した。


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呉英被告の裁判を取り上げた雑誌。表紙は彼女の写真

呉英被告の裁判を取り上げた雑誌。表紙は彼女の写真

元金の返還や高額な利息の支払いに追われながらも、彼女は集めた資金を使って自身のために、宝石や複数台の高級自動車などをも購入した。2007年に詐欺罪で逮捕されたときは、約7億7千万元(約93億円)の負債があった。

逮捕された当時から、20代の農村出身の若い女性が、短期間で多額な資金を集められたのは不自然だとの疑問が浮上し、彼女の背後には汚職官僚がいる可能性が指摘されていた。彼女は警察の取り調べを受けた際、集めた資金を複数の政府高官に賄賂として贈ったことを認めたとの報道はあるものの、詳細は明らかにされていない。

2009年12月に行われた地裁での裁判で「集めた非合法資金は巨額で、他人の財産所有権を侵し、国家の金融管理秩序を破壊した」ことを理由に死刑判決を受けた。このときも「判決は重すぎる」との意見がネットなどに多く寄せられ、「高官たちによる口封じではないか」と推測する声も少なくない。

18日の控訴審の判決後も、呉英死刑囚の弁護士、張雁峰氏は香港メディアに対し「浙江省の政府関係者が司法に干渉した可能性がある」と述べ、裁判は公正に行われていないとの見方を明らかにした。インターネットには「共産党の汚職幹部はほとんど死刑判決を受けないのに、民間人の彼女だけが死刑になるのは不公平だ」といった声が殺到している。

李長青弁護士は公開書簡で「中国の金融機関は国有企業への融資を優先しており、民間企業の融資ルートは少なすぎる。呉英氏のようなケースは規模の差こそあれ、中国では珍しい現象ではない」と指摘した上で、「国の欠陥ある制度がもたらした問題で、若い女性経営者だけに責任を取らせること不公平だ」と主張した。社会の公平と正義の実現させるためにも「彼女の命を助けてほしい」と結んでいる。(北京 矢板明夫)